†Orion†〜Nao's Story〜
フライパンを握っていたお父さんの、空いていた片方の手がそっとあたしに近づいてきた。
「な、なにっ?」
あたしが仰け反るよりも早く、お父さんの大きな手が髪に触れた。
顔にかかる髪をそっとかきあげ、お父さんの視線は耳たぶにいく。
「よし、まだ開いてないな」
「は?」
「ピアスだよ。奈緒、病院に行くの待てなくて、自分で開けたかなーって思ってさ」
へへっと子供みたいに笑いながら、お父さんの手があたしの髪からゆっくりと離れていく。
「ちゃんと病院に行くよ。お金まで出してもらったんだから」
反抗期のコドモみたいに、あたしは髪を整えながら口を尖らせる。