†Orion†〜Nao's Story〜


「盗み聞きって……。イヤでも聞こえてくるから仕方ないだろ」



鬱陶しそうに顔をしかめながら言う森谷。


へぇ。そうですか。

都合の悪いときは、“音楽聴いているので”って澄ました顔して聞こえないふりするくせに。



「長谷川先輩のためにピアスねぇ……」



意地悪そうに笑う森谷。

反発しようにも、その理由は正しく、あたしの顔はあっという間に熱くなる。



「だから何よ。彼女いないもんだから羨ましいんでしょ」



憎まれ口ついでに、あたしはイーッと口角を思い切り引いて、挑発するかのように歯を見せる。



「……彼女? そんなもん、俺にだって普通にいるけど」



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