†Orion†〜Nao's Story〜
廊下のすみに腰を下ろし、友達としゃべっている男の先輩が、あたしを見てにこにこと笑っている。
えぇと……誰だっけ?
て言うか、あたし……知らない、この人のこと。
漆黒の短い髪の毛は、整髪料で造作にセットされている。
少しだけ陽に焼けた肌に、切れ長の一重の瞳。
長谷川先輩よりちょっとだけイイ男かな……と思ってしまったあたしは、とんでもない不届き者だ。
「あの……」
スッと立ち上がり、あたしに歩み寄ってくる彼は、とても人懐こそうな笑顔を見せる。
「料理長の娘さんだよね?」
「え……、あぁ、はい……」
なんだ。お父さん絡みか。
てことはこの人、お父さんの店でバイトしてるんだ。