君のとなり―昼休みの屋上で―
私達を席に座ったのを確認して、飲み物のオーダーを取り終わった案内係は、



「では、少々お待ちください。」



と言って、得意の営業スマイルを顔に浮かべて、席から離れていった。








―――そして10分程。
美夏と喋っていると、声が掛かった。



「いらっしゃいませ。御指名いただきました、ナツメです。」




裕には劣るが、なかなか顔の整った子だ。黒髪に金髪のメッシュが入っていて、口元から覗く八重歯が可愛らしい。






「隣、よろしいですか?」



そう言って、首を傾ける。





「へ―・・・かわい―♪どうぞどうぞ♪」




ナツメくんが気に入ったらしい美夏は、即座に席を勧めた。









――――――――――――




ここに来てから30分程たった。
美夏とナツメくんは喋りつづけていたが、私はあまり興味がなかったので、とりあえず相槌だけうっておく。



もうそろそろ、イベントが始まる時間だ。







「・・・あははっ。でね、『美夏、もうすぐイベント始まるんじゃない?』




これ以上話を続けさせるとイベントに間に合わないので、私は美夏の言葉を遮る。




「あ、ほんとだ―・・・。
ナツメくん、ごめんね?私達、もう行かなきゃだから・・・」
「そっか、残念だな・・・。またE組遊びに来てよ♪美夏ちゃんとは友達になれそうだし♪
俺、ナツメって本名だから。」




そう言って笑うナツメくんの顔には、嘘がなかった。








―――「ありがとうございました♪」




見送られた私達は、校庭でやるイベントに間に合うべく走った。






『美夏、急いでっ!』

「はるか・・・足、速い・・・」



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