恋・したい
二人の会話も周りの音も耳に入ってこない。
柚季が御曹司?
柚季のお家が財閥なの?
頭の中は、?で埋め尽くされ不意に頭痛を覚えた。

【リナーシャさん少し外しますね。野上先生此方へ】
「リリアまた後でね」

人波から外れてバルコニーの方へと逃げた。

『どうゆう事?おん…御曹司って…』

声が安定しないから震えてる。

【黙っててごめん。騙すつもりじゃなかったんだ。その…御曹司とか財閥とか抜きにして僕の事見て欲しかったから!だから…】

語尾が力なく消えた。バルコニーの柵に手をかけ遠くを眺めている。
そんな柚季の手に自分の手を重ねゆっくりと答える。

『柚季も私と同じなんだね。見た目や肩書きじゃなく、ほんとの自分を見てくれる人を探していたんだね』
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