恋・したい
すうっと息を吸って前を見て歩く。柚季と同じ歩幅で。

【莉梨愛ちゃんとここに来たかったんだ】

大きな噴水がある公園。芝生とたくさんの樹木。秋空の清々しい陽射しが私たちを包む。

【いいとこでしょ?気に入ってくれたかな】
『こんな場所あったんだ。知らなかった』

柚季の手をほどき、公園内で一番大きな樹木目指し駆けてゆく。
公園なんて小さい頃に来た記憶しかないから無性に懐かしい。
息を切らし木を見上げる。色づいた葉をさわさわと揺らし緩やかな木漏れ日が身体に浸透してくる。

【莉梨愛ちゃんやっぱり子供みたい】

天使の笑顔で微笑む柚季に見とれてる私がいた。

【僕の大切な場所なんだ。嫌な事や落ち込んだ時にいつも此処に来る】
『そうなんだ。いいとこだね』

深呼吸をし、背伸びをして目を閉じた。
太陽の光、風の囁き、葉揺擦りの音、大地の暖かさ。
最近忘れてた。自然の中で暮らしてる事も。夏の暑さとは違う太陽の熱を感じ目を開ける。

『大切な場所教えてくれてありがとう』

隣に居る柚季と顔を見合せて笑った。
< 81 / 244 >

この作品をシェア

pagetop