准教授 高野先生の恋人
寛行さんは自分が現在抱えている仕事についてちょっと話をしてくれた。
「締切まで本当はまだ余裕があるんだけど、大学が始まってしまうとなかなか、ね」
一月は本来、僅かな講義と定期試験だけのはずなんだけど、
彼には、10月に病気で休講した分の補講があった。
「だから、7日の午前中にはなんとかやっつけて、午後には森岡に渡せたらって」
「森岡先生に?」
思いがけず森岡先生の名前が出てきて、私はちょっと意外でびっくりした。
「校正も含めて原稿を見てもらうことになってるんだよ」
「森岡先生は幻想文学の人なのに?」
「うん。専門は違うけど信頼している人に見てもらうのがいいんだよ。
そうして忌憚のない意見を言ってもらって、またちょっと見直したりするんだ。
僕が森岡の原稿を見ることもあるよ。
僕らは学生時代からそうしてきたんだよ」