准教授 高野先生の恋人
寛行さんの話によると、F女学院はその手の問題に敏感で男性教員には厳しいらしい。
「ほら、ウチの大学って音楽科があるじゃない?それも一つの理由なんだよ」
「どうして?」
「レッスン室での1対1の個人指導があるからさ。なにせ防音の密室だからね」
「あー、なるほどー」
「音楽科はウチの大学の看板学科だし」
大学側の徹底的な配慮は、問題が起きたら学生だけでなく大学も痛手を負うから、か。
「まあなんていうかさ、自己防衛とかリスク回避とかトラブル防止とか言っても、
決してね、学生を信頼していないわけじゃないんだよ。
だいたいね、わざと事件や問題をでっち上げるような学生がいたとしたら、
それはきっと余程の恨みがあるとか、何か根深い別の問題があるに違いないだろうし。
僕らが恐れているのはね、教員として親身に指導したり相談に乗ったりした結果、
それを、恋愛感情の好意と勘違いされてしまうことなんだ。
“自分は他の学生とは違う特別な存在なんだわ”ってさ。
そう思い込んだ学生が暴走して大変なことになっちゃうってケースがあるんだよ。
だからね、近づきすぎてはいけないし、親密になりすぎるのもいけないんだ」