准教授 高野先生の恋人

寛行さんの話によると、F女学院はその手の問題に敏感で男性教員には厳しいらしい。

「ほら、ウチの大学って音楽科があるじゃない?それも一つの理由なんだよ」

「どうして?」

「レッスン室での1対1の個人指導があるからさ。なにせ防音の密室だからね」

「あー、なるほどー」

「音楽科はウチの大学の看板学科だし」

大学側の徹底的な配慮は、問題が起きたら学生だけでなく大学も痛手を負うから、か。

「まあなんていうかさ、自己防衛とかリスク回避とかトラブル防止とか言っても、

決してね、学生を信頼していないわけじゃないんだよ。

だいたいね、わざと事件や問題をでっち上げるような学生がいたとしたら、

それはきっと余程の恨みがあるとか、何か根深い別の問題があるに違いないだろうし。

僕らが恐れているのはね、教員として親身に指導したり相談に乗ったりした結果、

それを、恋愛感情の好意と勘違いされてしまうことなんだ。

“自分は他の学生とは違う特別な存在なんだわ”ってさ。

そう思い込んだ学生が暴走して大変なことになっちゃうってケースがあるんだよ。

だからね、近づきすぎてはいけないし、親密になりすぎるのもいけないんだ」


< 137 / 324 >

この作品をシェア

pagetop