准教授 高野先生の恋人
「美穂ちゃんと森岡のケンカはいつもワンパターンなんだよ。
とても些細なことで美穂ちゃんが腹を立てるとこから始まるわけなんだけどね。
問題は、些細な理由そのものじゃなくて森岡がそれに気づかないってとこなんだ。
で、美穂ちゃんとしては結局いつも森岡のその鈍感さが一番頭にきちゃうわけ。
だから意地にになって自分が怒っている理由を森岡に絶対に教えない。
そこで“だんまりの神”が降臨する、と。
そして、だんまりの神が美穂ちゃんとこに降りてくると起こる現象というのが・・・」
寛行さんが言葉を区切って、ちらりと森岡先生を見遣る。
森岡先生が、やや言いづらそうに口を開く。
「煮込み始めるんだ、ぐつぐつと・・・」
は?煮込み始める??ぐつぐつと???
「“美穂ちゃんが煮込み始めた”と言っては森岡は僕に泣きついてきたもんだよ」
そう言って寛行さんはまるで反芻するように、うむうむと頷いた。