准教授 高野先生の恋人
赤ちゃんのとき人間は見ることよりも聞くことのほうが得意なのだという。
そして、お話しすることはできなくても周りの音や声にじっと耳を傾けていて、
その間に聞いた言葉の数々は頭の中にしっかりとプールされているのだ、と。
「チロにも言葉を大事にできる豊かな人になってほしいなぁ、龍ちゃんみたいに」
「“超~”とか“やばい!”とかその辺は似て欲しくないなぁ、僕は」
「もうっ!高野君!」
「そうだぞ!何気に感じ悪ぃぞ!」
「はいはい、悪かった悪かった」
森岡先生と美穂さんと寛行さん・・・3人が醸し出す楽しげな空気と軽やかなリズム。
私はまだまだそれを見守る係だけれど――
「寛行さん、謝るときは心をこめて!」
もう今は自分のことを淋しいなんて、ちっともぜんぜん思わなかった。
帰りしな、私は森岡先生と美穂さんにお願いをした。
「また遊びに伺ってもいいですか?」
「“もちのろん!”に決まってるでしょ!」
「あーあ、田丸の悪い影響だ・・・」
そんなわけで、美穂さんのとびきりの笑顔と森岡先生の苦笑した顔に見送られ、
私と寛行さんは、明るく楽しい森岡家をあとにした。