准教授 高野先生の恋人
3月も中旬に入ったある日。
ケータイが知らないアドレスからのメールを受信した。
なんとなくそうかな?とは思ったけど、開いてみると発信元は予想通りカスガイで、
本文には無事に帰国して実家に居る旨と、新しいケータイ番号が書かれてあった。
カスガイも帰国したてでバタバタしてるらしいけど、私もまさに多忙を極めていた。
バイト先で急に人手が足りなくなる事態が起きて、シフトを増やすことになったり。
先輩のお引越しの手伝いや、研究室のレイアウト変更の準備があったり。
そんな慌しい中、学位授与式があり、研究室の謝恩会と追い出しコンパがあった。
追いコンの仕切りは何故か昔からD2の学生がやるという慣例があって、
そのため、幸い私も真中君も基本的にはほぼノータッチ。
1次会はちゃんとした会場を押さえての謝恩会で先生方も皆さん出席されていたけど、
1次会が終わると先生方はカンパだけして、何故か不思議とすーっと消えてしまわれた。
私がはてな?って顔をしていると、教員で唯一残った助教の海津さんが教えてくれた。
「並木先生の計らいなんだ」
「並木先生の、ですか?」
学生だけで気兼ねなく自由に楽しく語らいなさいという心遣いなのだ、と。
私は、なんだか並木先生らしいなぁと、鼻歌まじりに歩く先生の後姿を思い浮かべた。