准教授 高野先生の恋人
開始時刻になると“担当教員”がなにやら少し急ぎ足で教室に入ってきた。
長身に銀縁眼鏡のスーツ姿のその教員は愛想もなく早速淡々と講義を開始した。
「おはようございます。先週は本講義の概要についてのガイダンスでしたが――」
手元の資料に目を落としながら、やや俯きかげんのままに話すその人を、
私はまるで念でも送るかのように……っていうか真剣に送りつつ、じーっと凝視した。
そして、ほどなくして私の念はちゃーんとばっちり届いたのである。
「尾崎紅葉の金色(!)夜叉は――」
目が合った瞬間、ほんの僅かだけれど高野先生はぎょっとした目をして驚いた。
もっとも、他の学生はそんなことちっても気づいていないだろうけど。
彼の反応に大満足の私は嬉しくて、思わず小さく手を振りそうになったけど我慢した。
そんな私に見られながらも彼は平常心を保ちつづけ、講義はなんとか無事終了。
むむむむ、恐るべしプロ根性!自分の彼氏ながらなかなかの人物である。なーんて。