准教授 高野先生の恋人

がやがやわらわらと教室を出ていく学生の人波にまぎれ、

私はそそくさと逃れるようにしてその場を立ち去った。

文学部棟1階にある喫茶コーナーで珈琲を二つ買い、早足で研究棟を目指して急ぐ。

一足先に彼の研究室へ到着した私は、行先表示器を見てあれ?っと思い首を傾げた。

几帳面な彼はいつだってきちんと居場所を表示させているのに……?

何故“帰宅”のまんまになってるの???

「おはようございます、鈴木さん」

「ひぇっ!!」

ぎょっとして振り返ると、ニコニコ顔の高野先生が立っていた。

「お、おはようございます、高野先生」

「いやぁ、1限の授業から聴講とは感心です。鈴木さんは早起きさんなんですね」

こ、怖すぎる……笑顔すぎるこの笑顔、目の奥は絶対に笑ってないし……。

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