准教授 高野先生の恋人

ソメイヨシノよりも濃いピンク色をした立派な枝ぶりの枝垂桜。

私たちは少し離れて遠巻きに、その美しい桜をしばらく黙って眺めた。

夜の公園は、まさに祭の後の静けさと淋しさに包まれていた。

そういえば――

「あれ?今日、月って……」

「今日は大潮、新月なんだよ」

見上げると澄み切った夜空に月の姿は見当たらなかった。

人影も月影さえもなく二人きりの私たち。

誰も見ていないのをいいことに、私は彼にぎゅっとべったり抱きついた。

まったく私も彼女らしく振舞えるようになっというか、大胆になったというか。

彼の腕の中はいつだって安心であたたかくて心地いい。

「ずっとこうしていたいです」

「“やべぇ、おまえ超可愛すぎ。俺マジで理性保てねぇかも”」

「もう!なんで俺様先生なんですか!」

彼の台詞にころころくすくす笑いながら、私はさらに彼の胸に頬を埋めた。

< 274 / 324 >

この作品をシェア

pagetop