准教授 高野先生の恋人

カモシカっていったい何者なんだか……。

リサーチャー?それとも、エージェント?

だいたい、個人情報の取り扱いについてとか、説明ぜんぜんなかったんですけど?

それに、協力者への謝礼なんかは?えーと、いったいどうなってるんでしょう?

まったく、寛行さんの作り話はいつだって“ざっくり”で、つっこみどころ満載だ。

だからといって、それをいちいち指摘するなんて無粋なまねは絶対しない。

だって、私は――

惚れた弱みなんかじゃなく、可愛くって遊び心のある彼が大大大大大好きだから――。

私は彼の背後にもそりとまわると、その大きな背中を腕ごとまるごとぎゅっとした。

「“愛する彼女に思い出に残るプロポーズをしたいと悩める男性諸氏”さん?」

「“愛する彼女に思い出に残るプロポーズをしたいと悩める男性諸氏”ですけど?」

いつも彼がしてくれるように、優しく包み込むように抱きしめてみたかった。

なのに、実際は――

彼の背中にしがみついてるみたいな、へばりついてるみたいな格好になっていた……。

「私、これじゃあまるで憑き物だね」

「いやいや、“愛する彼女”を背中に背負(しょ)うのも、なかなか乙なもんだよ」

そうして彼は、それこそ私を背負い込むように前へゆらりと傾きながら、

楽しそうにくすりと笑って、さらにさらに、べったり私に取り憑かれた。

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