准教授 高野先生の恋人
寛行さんは、もう涙目の私の背中をさすりながら、たしなめるような口調で言った。
「ほらぁ、聞き分けのないこというから、長屋のとっつぁんになっちゃうんだよ?」
「なが……やっ?…ゴホ、ゴホゴホ…」
長屋のとっつぁん?なんじゃ、そりゃ!?
「あーあー、もう…無理にしゃべらない」
背中をさする彼の手に、いっそうじわりと力が入る。
「時代劇、見たことない?貧乏長屋の貧乏父娘(おやこ)が出てくるくだりだよ。
胸を患ってる父親が激しく咳き込みながら娘に言うんだ。
“すまないね、俺がこんな体なばっかりに、おまえに苦労かけちまって”ってね。
そしたら娘が、これまた言うわけ。
“何いってんのよ、おとっつぁん。それは言わない約束でしょ?”ってさ」