准教授 高野先生の恋人
私は、先生や看護師さんと違って患家を訪れることがない。
だから、在宅療養されている患者さんに直接お目にかかる機会もほとんどない。
けれども、患者さんのご家族と接する機会はわりと頻繁にあったりする。
嬉野さんの場合も同じで、患者さんであるご主人とは面識がなかったけど、
奥様とは電話やFAX、あるいはメールでのやりとりがあったし、
奥様だけで来院されたときに、実際にお目にかかったことも何度かあった。
だから、急変と聞いたとき、私の頭に真っ先に浮かんだのは、
患者さん本人ではなく、その奥さんのほうの顔だった。