恐怖 DUSTER
「前の千恵と里美が仲良くなってから面白い現象がおきたのよ」


千恵と里美がお互いを見つめながら微笑み合う。


「前の千恵が私に言ったのよ、里美も出て来る悪夢を最近見るって」


「麻美が見させたんじゃないの?」


「私には、そんな事はできないわよ。私ができる事は閉じ込められている者の心を感じ取る事だけ」


それでもたいしたもんだと思いつつ弥生は、前の千恵が見出した悪夢の原因を考えてみた。


「あの暗闇の場所に閉じ込められていた千恵が悪夢を見させたの?」


「私にも、そんな事できないって」


弥生は、訳が解らなくなって里美に視線を向けた。


里美は、すぐに首を横に振り無言で否定した。


麻美は意味深な笑いを弥生に向けながら言った。


「あの人がね、閉じ込められている千恵と里美の心を繋いでくれたのよ」


「そして千恵は、ずっと眠り続けている里美の心に語りかけていた」


里美は千恵の手を取り自愛の念を込めて言った。


「そう・・・千恵は自分も閉じ込められているのに、私に声をかけ続けてくれたわ」


「声をかけ続けた?どうやって?」


弥生の疑問に麻美が答える。

「だから言ったでしょ、心は繋がったって。声とは思い・・・相手を思いやる心の声なのよ」


「繋がった!・・・そ、そうだ。あの人って?あの人って誰?」


弥生は前の自分の記憶にも無い存在の、あの人が誰なのかとても気になった。


「なに?麻美、あの人の事も弥生に言ってないんだ?」


千恵が少し呆れた口調で言った。


「あの人の事は、また後で弥生に話すわ・・・」



そう言う麻美の顔は、またも魔性の表情であった・・・








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