恐怖 DUSTER
「弥生、しっかりして!早く自分の名前を言って!」



恵子が泣きながら言う。



「弥生、同じなのよ!あなたの後ろにいる女は、あなたと同じ名前なのよ!」



裕子も泣きながら、弥生に言い続けるのだが、弥生は正気に戻らない。



いつまでも目をつむり、まるで酔っ払いのようにふらふら体を揺れ動かしているだけだった。



女は、麻美たちの声になにも反応しない弥生の様子を見て、ほくそえんだ。



「くっくくく・・・みんな残念ね。弥生ちゃんは、私と離れたくないみたいね」



「やっぱり、弥生ちゃんは私と一緒がいいんだ・・・」



「目が見えない弥生ちゃんの代わりに、私が全てを見るの・・・」




「明るい世界は、私の物・・・」




「真っ暗な世界は、弥生ちゃんにあげるから・・・」




「弥生ちゃんは、私・・・私は、弥生ちゃん・・・」




「おんなじ・・・弥生・・・」




「弥生ちゃんは、私になり・・・」




「私は、弥生ちゃんになる・・・」





その時、麻美の目に、女の体が光の粒のようになって弥生の体に溶け込み始めているのが見え、言い知れぬ不安と焦りを感じた。




・・・こ、このままじゃ、大変な事になる・・・




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