恐怖 DUSTER
麻美は弥生の疑念を感じる事も無く話し続けている。


「千恵の入れ替わりは、なんの障害も無く簡単に成功したのよ」


「簡単ってね・・・」


麻美の言葉に不満を感じた千恵が言う。


「だって千恵は、あの暗闇の場所からずっと、私と前の千恵とのやり取りを聞いていて、閉じ込められる前の記憶も全て思い出していたじゃない」


「まぁ・・・たしかにね。私が入れ替わるチャンスである14歳の誕生日までの日々、麻美は前の私に気取られないように、入れ替わりの話を都市伝説として言ってくれていたからね」


「千恵は、ちゃんと私の話を聞いていてくれて行動してくれたから、入れ替わりもうまくいったのよ」


「私がどうしても入れ替わりたいと思えたのは麻美が里美の事を話してくれたからよ。暗闇の場所に眠り続けて閉じ込められている女の子の都市伝説の話をね」



「私の事を都市伝説に・・・?」


里美がきょとんとした表情で二人を見つめて言った。



「そうそう、前の里美は怖い話を聞きたがらなかったから苦労したのよ。でも、暗闇に閉じ込められて眠り続けている女の子の話だけは聞いてくれたのよ」


「そして、私は前の自分を恐怖に落としいれて入れ替われた」




夕暮れの川沿いの土手の道を歩きながら、第三者が聞けば恐ろしく感じるような事を
普通に話している麻美と千恵に、ほんの少し恐怖を感じる弥生であった。





・・・自分もそうやって入れ替わったんだ・・・




弥生は自分も入れ替わった過程を思い出し、前の弥生がどれほどの恐怖を感じ消えて行ったのかと思うと哀れに感じていた。
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