海に花、空に指先、地に霞
ギュッと抱きしめられて。
私は頬を凪世の胸に押し当てて。
「沙杏ちゃん。…君、まだ全然ピンときてないでしょ。オレたちが王ってのも、花嫁のことも」
凪世の声が、胸に伝わって直に響く。
いつも横に並んで聞くのよりは、ずっとずっと低い声に聞こえた。
甘いテノールが…頬から伝わって、体中に届くよう。
「…す、少しずつは…理解してるつもり。だけど…」
「……見て」
スルリ、と。
相変わらず繋がったままの手を、掲げるように持ち上げられる。
「………!」
パシャン、と渦を巻いた空気が…次第に水煙を帯びて。
水の鎖のように。
私たちの手に纏わり付く。
感触は…水。
でも濡れている感覚はない。
前もそうだった。
ヘンな黒い煙みたいなのに襲われたとき。
あの時も、凪世は不思議な力を使っていた。
…なんて不思議。
「水はオレの支配下」
自在に操ることができる、と。
ゆらゆらと、私たちの手を纏っていた水は、夕日に煌めいて……スルリと消えた。
空気に呑まれるように。
手に僅かに残るのは、冷たい水の触感。
でも、あたたかな凪世の手の温度はそのままだ。
同じように。
風や大気、天候は天鳥の。
大地や草木は森さんの支配下にある、と。