ユピテルの神話


哀しくて、哀しくて。
苦しくて、哀しくて。

涙が溢れる、
潰れそうな喉では…

その願いは、
最後まで「言葉」には出来ませんでした。


言エテシマエバ良カッタノニ。



――………。


ロマは鎮まりました。
僕の想いが届いたのでしょう。

目の前の彼の悲しそうな大きな瞳には、泣き崩れた僕の姿が映っていました。


――…キュウ…
『……ユ…ラ…、俺…』


大地は動きを止め、風たちも落ち着きを取り戻します。
村は、急な静けさに包まれていました。

彼の涙は止まりましたが、未だ雨は降り続いていました。
それは僕の涙でした。


「…もう止めましょう、ロマ…。もう止めましょう…」

『…俺…。俺…』

怒りを鎮めたロマは、みるみると小さくなり、僕の足が大地へと着きました。

彼は、普段の彼。
僕の、腕の中。


ワ…ン…
『…俺、花たちを…エマに…。村人が…俺……』

僕の腕には、赤い血。
村人に投げ付けられた石で受けたロマの傷からでした。
その血が、雨で流れます。


「…分かっています。辛かったですね…痛かった…ですね…。でも…もう止めましょう…」

誰が悪いのか、
分からなくなりました。


< 74 / 171 >

この作品をシェア

pagetop