七罪巡り
生い立ちも何もほとんどといっていいほど、オレはタキのことを知らない。
一緒に1ヶ月過ごしただけでは、『今』のタキを知るのでいっぱいいっぱいだった。

こんなイカレた奴からはすぐにでも離れたら良いのかもしれないけれど、ここでも顔を出すスロウスの性。

天涯孤独になった俺が楽して生きていかれるのはここだけ。

少し我慢してタキの『趣味』を手伝えば良いのだから。



「で、じゃあ俺は何をすれば?」

「ちょっとついて来て調べるだけ。それなら超楽だしいいだろ」


そうだ。ちょっとついて行くだけだ。
それで今日1日寝る場所にも食べ物にも、化粧水にも困らないで済む。こんな労働条件他では有り得ない。

自分に言い聞かせて、大好きな布団からの脱出を試みた。


「シノ、起きるの大変?」

「…大丈夫。」


ホシが本当に心配そうに聞いてくるのを見てタキは大笑い、俺は苦笑い。
それにしてもこんなに細かな表情ができるなんてすごい。一見では誰もホシが人間の女の子だと疑わないだろう。

ホシはロボットだ。
とても細かくプログラミングされた動きや学習機能のおかげで、現在の設定は中学3年生。見た目はタキの好みだけに基づいて作られている為に、整った童顔とオレンジに近いような茶髪をツインテールにしている。


「…ロリコン」

「それがなんだっつーの。ロリコンでイケメンが好きじゃ悪ぃ?」

「いや、悪くないです」

「お前だって犬とか飼うなら可愛いほうが良いだろ?それと一緒」


『イケメン』は嬉しいといえば嬉しいけれど、たとえ話の中では犬だ。ペットと同じ判断基準で家に住まわせる人間―ホシは人間、ではないけれど―を判断する彼にとって、もはや俺たちは人間というよりペットなのかもしれない。一緒に暮らしているというより飼われているのかもしれない。


「布団の上で考え込んでんなよ。見た目ギャル男なのにホンット根暗だよな」

「うるさい」


表面上ははねつけた言葉も心にはグッサリ刺さっている。
昔からピアスや制服の着崩し等々ファッションに気を使うのが好きで、面倒でもそこに関しては少しなら我慢してきた。

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