〜花魁〜
――…
―――…
『はぁ―…。』
ここに立って、早一時間。
嫌味なくらいサンサンと照らす太陽が、まるで“早くしろ”と言わんばかりに、俺の背中に照りついて…嫌な汗が出る。
白を基調とした、二階建てのアパート
4つ並ぶドアの一番奥に立ち、さっきからタメ息ばっかり…。
額から流れる汗と、緊張から来る胃の痛みが…俺のして来た“罪悪感”の証だろう――。
視界に入る“佐々木”と書かれた表札。
ここは、花の家。
まだ、ここに住んでいたと言う安心感は、直ぐに罪悪感に変わり…ウジウジしたままチャイムを押せずにいると、
あっという間に時間が過ぎてしまったんだ。
「……光?」
ようやく、チャイムを押す決心がついた時…家の中からではなく、俺の後ろから聞こえて来た懐かしい声に、勢い良く振り返った
『花…?』
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