〜花魁〜


目の前には、花柄のワンピースを着た

お腹の膨らんだ花が、両手に荷物を抱えて立っていた。




「来ると…思った。」



そう言った花は、ゆっくり近づいて来て、玄関の鍵を開けると…

「どうぞ」と、招き入れてくれた。




『お邪魔…します…』


「その辺に座ってて!!」




花のお腹と、ちらほらと置いてあるベビーグッズが…子供の存在を強調していて…



俺は、なんて場違いな場所に足を踏み入れてしまったんだろう?


そう思った―…。



今更、来れる様な立場じゃないんじゃないか…?





「黙っててゴメンね。言うつもりもなかってん…。ドジっちゃった♪……光は、何も気にせんでいいで?あたしが勝手に選んだ事やからさっ!!」


『…うぅん。』



目を背けたくなる程の笑顔を向けて来る花…。



ここで、目を逸らす事は簡単だ…

ただ、俯けばいいだけなんやから。



やけど、それじゃ…来た意味がないんだよ。



言わなきゃいけない事があるんや。

伝えなきゃいけない言葉が…

俺にあるんや――。





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