〜花魁〜
年が明けてからの一時間は、ほんまに賑やかで
閉店時間の1時になると、ゾロゾロと客達が帰って行き
蓮さんと花の3人になった店内は、一気に静寂に包まれる。
片付けをしていると、カウンターに腰をかけていた蓮さんが
いきなり立ち上がり、古時計の元へ向かった。
「来海…、去年はありがとう。今年も…よろしく―…。」
そう言って、時計を撫でる蓮さんの声が震えている様な気がしたけど…
話しかけるなって訴えて来る背中に、何も言えなくなる。
来海(クルミ)…
久しぶりに聞いた名前に、懐かしさが込み上げて来た。
蓮さんの、昔の彼女の名前―。
良く店の中で、空と2人で大騒ぎしていたのを思い出した。
でも、ある日パッタリと姿を見せなくなった来海ちゃん…。
蓮さんに聞いても、知らないの一点張りで
結局、未だに教えてくれないけど、
この後ろ姿を見てると、今でも好きなのかな…?って思った。
「さぁ〜て、帰んで〜!!」
そう言って振り返った蓮さんが、いつもの蓮さんで
少し“ホッ”とした
この古時計に、あんな思い出があったなんて…
この時の俺には知る由もない――。
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