さよならの十秒前
「私が?何で?」

思わず声が裏返る。

そもそもどうしてこの茶髪男は、私の名前を知っているのか。

そしてなぜ坂井奈緒とほぼ関わりのない私に、こんなことを打ち明けてきたのか。

男はまたニカッと歯を見せた。

「今日来ている奈緒のクラスメイトのなかで、島井さんが一番真面目そうだし」

「えぇ…?というか、なんで、名前知って…」

「あぁ、名前?」

男はまだスピーチを続ける西野の背中を指差した。

「あの子に聞いたら教えてくれた。えぇと、西川くん?が、島井ナオさんっていうんだよって」

西野…。

個人情報の流出じゃないか。委員長のくせに。

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