さよならの十秒前
夏休みの学校には、人がほとんどいない。

校庭には野球部がいるけれど、校舎はひっそりしている。

私は南校舎の職員室の窓を、外から覗いた。

中では、小太りな男の人が、扇子をバタバタさせながら机に向かっている。

「北村先生」

私が呼び掛けると、先生は顔を上げて、目を丸くした。

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