さよならの十秒前
「島井。どうしたんだ、夏休みなのに」

北村先生は立ち上がって、私のほうへ身を乗り出した。

私たちの担任である北村先生は、愛嬌のある三十路男性だ。

頼みやすい人でよかった。

私は少しホッとした。

「あの、先生、名簿ってあります?」

「名簿?」

「はい。一年生のときのなんですけど」

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