臆病なサイモン
「なに観よう…」
ダンゴは映画をまだ決めきらないらしい。
そういえば、屋上で映画の話題になったとき。
『映画、詳しいね』
好きなの?と俺が紡ぐ前に。
『…嫌いだけどね』
と答えたダンゴ。
遠くを見るような、誰かをそっと労るような、そんな眼差しをしてたのを覚えている。。
今なら、理由がわかるよ。
『…親が映画好きなの。ジャンル関係なしに片っ端から一緒に観てた』
俺と中身のないお喋りをしながら、「ダンゴ」はなにを見ていたんだろう。
「……」
ちらり。
目立ちたがりのキンパツを隠すために被ってきたキャップの隙間から、ラインナップを眺めているダンゴを覗き見る。
いつもの、鋼鉄の制服を身に纏ったダンゴとは雰囲気が全然違った。
(……普段が「みたらしダンゴ」だとしたら、今日は「三色団子」)
髪を丸めているゴムが、いつもの黒ゴムじゃなくて、なんかひらひら襞(ひだ)の付いた腸を思わせるようなゴム(※シュシュのこと)だったり。
肩幅が小さいから、襟の詰まったワンピースが似合うな、とか。
「……」
だめじゃん、俺。