リベンジコレクション
「反撃、するんだろう?」

「したいです、けど……」

 ソウの笑顔につい見とれてしまっていた私は、目を離すこともできず、見つめ合ったままぽそりと答える。

「あの彼氏……モデル関係の仕事してないか?」

 どこか確信した様子でソウが聞いてきた。

雑誌でも見たのだろうか。

あつし君はかなり人気のある読者モデルで、有名雑誌の表紙を単独で飾ったこともある。

思い出してちょっと落ち込んだ私に、ソウは考える様子を見せた。

「あいつの周りにはスタイル抜群の美女が掃いて捨てるほどいるはずだ。あそこは視線を集めてなんぼの世界だからな。ちょっときれいになった程度じゃ、美女に見慣れた目にはそれほど印象に残らない」

 ぐさりときつい言葉が突き刺さる。

確かにその通りだ。

その通りなのだが、遠すぎる反撃の道のりに早くも心が挫けそうである。

どれほど己を磨けばあつし君に反撃できるような美女になれるのだろう。

もはや整形してイチから変えるしかないのではなかろうか。

お金のない私には手の届かない手段であるが……まさかそれで?

整形資金を稼ぐためにバイトしろと、そういうこと?

「事情は大体把握しました。……そこの新人、なにか勘違いしているようですが、ここはメンズ向けのショップです。店長の方針で、女性スタッフは雇っていません」

 美形眼鏡が冷たい視線を向けてくる。

その視線は私の顔より、もっと下を見ているような……?

そこには真っ平らな胸しかない。

縦に長く伸びてしまった私には、ささやかなふくらみすらないのだ。
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