リベンジコレクション
「反撃したいなら、相手と同じ土俵に立てばいい」

「同じ、土俵……?」

 空気を切り裂くように、凛とした声が私を貫いた。

ソウが何を考えているのかわからない意味深な笑みを浮かべて私を見る。

口元は笑っているが、眼差しは真剣だ。

心臓が高鳴っている。

先ほどまでの嫌な予感が身体を突き抜け、妙な興奮が沸き上がってきた。

よくわからないけど、とりあえず私はソウから目が離せなくなったみたいだ。

「簡単なことだ。ーーあいつよりいい男になればいい」

この瞬間、強い眼差しで言い放ったソウの顔を、私は一生忘れないだろう。

「え、えっと? 今、なんて?」

言葉がうまく頭に入ってこない。

ソウの顔に見惚れてしまっていた私の耳に、無理難題が聞こえたように思うが気のせいだろうか。

男がどうとか。

「男装するということでしょう? 立ち振る舞いは店長が教えてくださるのでしょうし、ファッションの見本となるスタッフに囲まれる時間は、あなた自身の感性をも磨くことができると思いますよ。……いい男になるなら、この店で働くのが一番の近道でしょうね」

 男装?

あつし君よりもいい男に?

背は高いし胸はないし男とたびたび間違われてきた私でも、生物学上は一応女なのですが。

頭が混乱して、状況がうまく呑み込めない。

「女を磨いたところで、大して相手の記憶には残らないと思う。普通の男ならともかく、読者モデルとして働く男なんだろう? さっきも言ったが、相手は常に一定レベル以上の女に囲まれてるってことだ。それなら同じ立場で、お前があいつより上のレベルだと、はっきり差を示してやる方がわかりやすい」
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