リベンジコレクション
私はあまり見た目に気を遣うタイプではなかったし、ブランドもまったく知らなかったが、あつし君の話を聞いているだけで自分までそのブランドが好きになったような気がした。

 そして告白された二度目のデートからは、彼の行きつけのショップを周るようになり、三度目のデートからはおねだりが始まっていた。

そのおねだりも大人びた彼がすると子供っぽく見えて、愛しく思えたのだ。

これがいい、あれがいいと言われながらねだられると買ってあげたくなってしまうし、あつし君が欲しがるものはどれもおしゃれに見えた。

単純な私は、買ってあげたものに身を包むあつし君を見ると、堪らなく幸せになる。

帰宅してからもネットで彼に似合うものを検索しては次のデートを夢想し、私自身が彼色に染まったつもりいたのだ。

 実際は一年かけても、彼が満足するものは選べなかったが。

そもそも凡人の私に、センスというものが欠けているのだろう。

 俯いたままの頭がじりじりと日に焼ける。

7月に突入しても雨が連日降り続いていた中、今日は珍しく晴天が広がった。

だったら外でランチでもと思って作ったお弁当は、すでに生ゴミへと変化してしまったけれど。

ずるずるとその場に座り込んだ私を避けて、人々が忙しなく通り過ぎていく。

ガードレールに頭を預けて、プレゼントとお弁当の残骸を握りしめ、惨めな気持ちのまま干からびそうになっていた私の前に。

男は、現れた。
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