さうす・りばてぃー
「実を言うと、今考えてたのは、晴れるのかなってことだ。ほら、雲行き怪しいし」

 俺は天を指差しながら言った。

 やはり正直者にはなりきれない俺だった。

「あ、そういえば」

 見由はその指につられるように、天を見上げた。

 俺はそのとき、勝利を確信した。

 話をそらさせることに成功したようだ。

「天気予報は、今日の夜半過ぎから雨だって言ってましたよ。季節外れの台風が来るんだとか」

 見由は何気ない顔で言ってくる。

「おいおい、マジかよ」

「でも、明日はまた晴れるんだそうです。夜の間に通り過ぎるなら、ちょうどいいんじゃないですか?」

「あまり降らなきゃいいな」

「はい!」と、見由は元気いっぱいに返事をした。

 それから、休憩なんかも交えつつ、三時間ほど歩いた。

 歩く順番は前と変わっていない。

 だが、穂波と見由との間がずいぶん離れた。

 途中から、見由の歩くペースが明らかに落ちているのだ。息も切らしているし。
 
 理由は明らかだった。体に比べ、荷物が大きすぎるのだ。

 何が入ってるのか知らないが、自分と同じくらいの大きさのリュックを持てば、そりゃ重いだろう。
 
 それに気づいた穂波が、徐々に歩く速度を遅らせ、俺の隣にまできた。

 穂波はそっと耳打ちしてくる。

「ねえ、何とかしてあげられない?」
 心配そうな穂波。

「穂波が荷物持ってやれば?」

「それが、だめなのよ。さっき声かけたんだけど、迷惑かけたくないからって、断られちゃうの。ゆうくんだったら何とかできるかなって思ったんだけど」

 なんか、ずいぶんと期待過剰な気がする。

 俺にどうしろというんだ。

 そう言おうかと思ったが、いちおう口先だけなら人には負けないと自負している俺のことだ。

 引き下がるわけには行かない。

「じゃあ、何とかしてみよう」

 うなずいて、穂波が離れる。

 俺は少し前を歩く見由に近づくと、声をかけた。


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