君に許しのキスを
多くの人が行き交う、しかも、そのほとんどが、うちの学校の女の子。


その中で、彼はまっすぐにあたしの瞳を見つめ、臆することなく、きっぱりと言ってくれた。


その瞳に、嘘は無いと確信できる。
そう思うと何故か、涙がこぼれそうになって、慌てて口元を手で覆い、視線を彼から外した。


頭上から、彼の優しい声がする。

「…今すぐ返事が欲しいとかじゃ、ないから。
落ち着いてからで良い。
それが何年先でも、何十年先でも、待ってるから。」


一瞬、彼の声が詰まった。
あたしがその声の方を見上げると、彼は苦しそうな顔に、微笑みを作った。

「俺や、俺の兄貴のことが許せないなら、それで構わない。
君に無理させるつもりはないから。」

あたしは、涙を抑えきれなかった。
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