魑魅魍魎の菊
*
笛の音が響き、丑寅から出現した——百鬼夜行。
夜の風により、笛の音がどこまでも響く。"頭"の後ろで笛を奏でる二匹の天邪鬼が居るのだ。
その音はあまりにも甘美だが、騙されるな。奴らは何をしでかすのか解らない。百鬼夜行の頭からは"強大な殺気"を流れ出し、玖珂のモノでも弱小な奴は泡を吹いて倒れるくらいだ。
——妖力が計り知れない。その力は全てを滅するほどかもしれない。
「……やはり、結界が張られています」
そう告げたのは、「烏天狗・鴉丸」。"頭"は「…これはやり手のようだ」と呟きながら黒い着物と白い羽織りものを靡かせる。
「じゃが、これしきの物の怪。わしらが滅されるわけがない」
鴉丸の後ろでしゃがれた声を出す老婆は「蛇骨婆(じゃこつばばあ)」。右手に青い蛇、左手に赤い蛇を巻き付けている。
その後ろにも夥しい数の妖怪達が列を連ねているのだ。
この《百鬼夜行》が巷を騒がしている理由——
それは、徘徊する道の先々で出会う「目に見えないもの」を容赦なく滅していることだ。
つまりは人間でいう「殺人行為」。その"頭"は強大な妖力を持ち、様々な噂を飛び交わせていて本来の姿を知るものは《百鬼夜行》以外のモノは知らないのだ。
神が妖怪に成り下がったのか、特別な秘薬を持つのか、強力な武器を持っているのか。
目撃した妖怪から妖怪へと、様々な噂をされている。
そして、もう一つの理由は——
「あ〜あっ!血が欲しいよー"マイフェアレディ"」
「いや、使い方違うからね」
金髪青目、牙を生やした——吸血鬼。
「早くドラマ見ようぜ?…今日見逃すの、困る」
一見人間のように見える——ホムンクルス。
「「ご飯ご飯!!」」
赤い竜、白い竜が頭上をパタパタ飛ぶ——
そう——
日本の妖怪が恐れても仕方無いこと。
この百鬼夜行には、何故か大勢の西洋の物達がいるのだ。
見た事のない生き物が列を連ねているのだから——