魑魅魍魎の菊
何故盲いた義影が「玖珂の当主」にまで上り詰めれたのか。それは単純な理由である、彼は他の陰陽師よりも優れていた。ただそれだけなのだ。
誰にも手伝ってもらわずに一人で生きていける、文字だって達筆、着物も自分で着衣出来、体術にも優れていたからだ。
(——何よりも物の怪以外のものも視えるのだよ)
義影は細く微笑みながら、花の香り、虫たちの鳴き声を敏感な耳で聞き取る。目が見えない変わりに他の器官が補ってくれるのだ。
だが、
そんな自然の音から"奇怪"な音と声が聞こえきた——
『——ワタシの元に堕ちろ——…』
『——美しい、美しい"大槻"』
『愛してる愛してる愛してる、だからだからだから…』
——この手で息を止めたくなるね、ワタシのものになろうがなるまいが、それでも殺してやりたいぐらい美しいよ——
(…そして、視界の端に何やら赤い閃光が煌めいた)