魑魅魍魎の菊



やれやれ、これから儂は大槻殿に頼まれている"モノ"を届けなければならないのに…。


そんなことを考えながらも、歩む足は早くなっていった。





——この地は我が玖珂の家が代々守り続けている土地である。何百年…いや何千年も前からかもしれない。


そして、この地で厄払いの神をし我々の庇護を受けているのが「大槻殿」である。儂は盲いているからお顔を拝見したことはないが、大層整った顔をしているのはこの手で感じ取った。


着ている着物も何処かの姫君のようである。その力も儂が知る限りでは絶大であるのだ。










——だが、彼女は何とも脆い神なのだ。



義影の懐には、その神の命ともいえるものが携えてあったのだ。それを今届ける所でもある。




それはこの世のものとは思えない、眩い光を放つ宝玉だ。
まさに神を象徴するようなもの——




と、人々は言うらしい。だが、儂には視える。神々しい何かが解き放たれている。



(悪を滅ぼす礎となろう)




背後を這いずり回るように着いて来るおどろおどろしい存在と鉄臭い香りはこの際最早関係ない。





「——早く急ごう」



そうしてまた、シャランシャランと錫杖が鳴るのだった。


 
< 310 / 401 >

この作品をシェア

pagetop