魑魅魍魎の菊
「わ、私は若をこ、殺すなんて——!!」
「そ、……うだ…きょ、うこ…が…」
鏡子が悲鳴じみた声を出し、白は息が荒いながらも反論する。
「そこの狐くん、これ飲みな。傷が癒える」
夜行は無理矢理白の口の中に薬のようなあめ玉を突っ込むのだ。礼を言いたいが、まずは鏡子の問題が先だ。
「…で、どういう事だ夜行」
「それでね。"未来では"この子は君を殺したことになるんだ」
「っ……何故だ、じ、事故かよっ…!」
夜行は首を振り、否定をする。
何故か夜風に乗って——菊の香りがしたのだった。
(菊の花は高貴と言うが、あまりにも美しく悲しい…)
「この子の技の一つで精神異常をきたすのがあるでしょう?」
「…あぁ」
「私もアレはトラウマになりそうな勢いだったよ」
あの女の苦しそうな声で本当に苦痛なのだと改めて認識しつつ、俺は鏡子の隣に腰掛けた。
「君とその子の"亜空間"にね、玖珂の若頭が引きずり込まれるんだよ。その鏡の子は誰かの精神を壊すことに快感を"菊花ちゃん"によって知るんだ」
「そ、そんな——!!」
「未来に繋がり、若頭の精神を滅茶苦茶に壊して。壊して壊して、その亜空間に閉じ込めちゃうんだよ?
「ち、違うっ……!わ、私は…」
「もう止めろ夜行!!」
そこに響いたのは菊花のキョトンとした声だった。
「どうして?貴方達の未来を教えているのよ?否定することないじゃない」