巡る巡る


あたしは再びグラウンドに目を向けようとしたけど、
それは彼のビニール傘によって阻止された。


「ならさ、
…一緒に入ってく?」


あたしに傘を向けながら、
高山君は軽く首を傾げながら微笑んだ。


「え、えっ!?」

焦ってあたふたしてしまうあたし。


「だって相沢も早く帰りたいだろ?もう遅いしさ」

まぁ、俺なんかと相合い傘じゃイヤだって言うならしょーがねぇけど。
おどけながら高山君は言う。


「…ぃ、イヤじゃないけど…」

モゴモゴと小さな声で喋るあたし。
こんな小さな声、雨音でかき消されてしまうんじゃないかと思ったけど、


「なら別に問題ないよね?
………おいで?」


ちゃんと彼には届いたみたい。


肩にかけていた傘を少し上にあげて、あたしが入れるように場所を開けてくれた。



< 17 / 94 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop