巡る巡る
あたしは再びグラウンドに目を向けようとしたけど、
それは彼のビニール傘によって阻止された。
「ならさ、
…一緒に入ってく?」
あたしに傘を向けながら、
高山君は軽く首を傾げながら微笑んだ。
「え、えっ!?」
焦ってあたふたしてしまうあたし。
「だって相沢も早く帰りたいだろ?もう遅いしさ」
まぁ、俺なんかと相合い傘じゃイヤだって言うならしょーがねぇけど。
おどけながら高山君は言う。
「…ぃ、イヤじゃないけど…」
モゴモゴと小さな声で喋るあたし。
こんな小さな声、雨音でかき消されてしまうんじゃないかと思ったけど、
「なら別に問題ないよね?
………おいで?」
ちゃんと彼には届いたみたい。
肩にかけていた傘を少し上にあげて、あたしが入れるように場所を開けてくれた。