とおりゃんせ2~日村令子の場合~
コートの中から出てきたのは

それは美しく逞しい男性だった

少しウェーブがかった肩ほどのブラウンの髪

掘りの深い顔立ち

大きな黒い瞳


その深く黒い瞳は

全てを吸い込んでしまうような…

そんな…憂いを含んでいた


「イケメン・・・」


由里は 自分の状況も一瞬忘れるほどの

そのナルゴという男性の美しさに見とれた


身体には タイやミャンマーの僧侶たちがまとっているような衣を身につけていた

ただし 衣の色は黒だ

肩近くの腕にはシルバーの太い腕輪がはめられていた


ナルゴはコートを脱いだ瞬間

恐らく足も使わず

一瞬にして令子の隣にスッと移動し

身体をピッタリと令子にくっつけた


そして その端正な顔を令子の顔の辺りに近づけ

その耳元に囁いた


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