とおりゃんせ2~日村令子の場合~

『今の小さな光が何だか分かりますか…』


また令子が話しかけてきた


「何かは分からないけど・・・すごくかわいいって思った・・・」


『今の光は あなたが人界を見ることなく葬った命です』


由里はもう一度 急いで足下に行った光に目をやった


「あんたが・・・そう・・・なの・・・?

私の赤ちゃん・・・・だったんだ・・・

私のこと・・・恨んでるよね・・・・

・・・ごめんね・・・本当に・・ごめんね・・・」


由里は足下の小さな小さな光に顔を近づけた

由里が顔を近づけると 光はまた上下に小刻みに揺れた


『その子はもう大丈夫です 成仏する気でいるからそこに居るのよ

あなたの優しさ あなたのぬくもり そして・・・

あなたの『愛』を 今はじめて その小さな魂に与えてもらったから

その子はとても喜んでいるのですよ・・・

あなたに愛してもらえて・・・

はじめて『愛』を感じて・・・もう・・・思い残すことは無いと・・・

あなたに伝えたいのです・・・』


由里は顔がぐちゃぐちゃになるほど 湧き上がる感情を抑えることが出来なかった

由里は声をあげて泣いた


きっと・・・泣くことも笑うことも表現出来ない子供の分まで 自分は泣いているのだろう・・・泣きながら由里はそう思った

本当に苦しいくらい涙が止まらなかった


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