とおりゃんせ2~日村令子の場合~
由里は先日のインターハイ予選の最後のテニスの試合を思い出した
「この試合に勝てば 念願のインターハイだ!!」
しかし相手も県大会優勝の経験もある実力者だ
取ったり取られたりの苦しい試合
インターハイ団体戦の切符がかかった最後のゲームでのジュース
全ては由里のこのシングルスの結果にかかっている
「ここで落としたら…ここで落としたら…
負けだ・・・」
そんな記憶を思い出しながら 由里はある事に気付いた
「そういえば私・・・体がこんなに切れてしまって・・・
これを治療するなんて・・・不可能だと思うんだけど・・・」
由里は再び絶望の淵へと落ちそうになっていた
「あれはナルゴがあなたの意識にそう思いこませただけの妄想よ
実際のあなたの肉体は 今は病院にあるわ
肉体は急性の『心臓マヒ』で たまたま近くを通りかかった人に発見されてあなたは救急車で運ばれたの
ナルゴたちの言い分も・・・分からないでもないの・・・
自分や自分の愛する人を傷つけられた恨みとは・・・そう簡単に割り切れるものではないもの…だからね・・・」
令子はそう言うと静かに立ち上がった
「そろそろ時間ね・・・あなたの・・・進むべき道」