とおりゃんせ2~日村令子の場合~

「待って!!教えて!!あなたは人間?」


由里は令子に叫んだ


「えぇ 人間よ」


令子は静かに答えた


「じゃぁ… じゃぁもし私が元の世界に戻れたら・・・」


「戻れたら?」


「また・・・会えますか?れいこさん・・・」


令子は由里に視線をやると優しいが強い眼差しで見つめた


「あなたが この今の気持ちを忘れずに生き続けた時

必ず『壁』に道を阻まれる・・・それでも・・・

あなたの心が『ホンモノ』であり続ければきっと・・・

そう…きっとまた会うことになるでしょうね・・・」


由里の目がかすんできた

意識は薄れ足下がぐらつき

立っていることが出来なくなった


「わたし・・・どうなるのかな・・・」


立っていられなくなった身体は 自然と柔らかいベッドに横たわるかのように フワフワと宙に浮かんだ


「あぁ・・・なんか・・・すごく気持いい・・・

わたし・・・このまま死んでもいいなぁ・・・

すごく居心地がいい・・・このままなら・・・

苦しいことなんて感じなくていいんだ・・・」


薄れゆく意識の中 令子の姿も段々とボヤけ何も見えなくなった




「由里ーーーーっっ 由里ーーーーーっ!!」



『うるさいなぁ・・・ だれ?わたしを呼ぶの・・・いま…ものすごくいい気分なんだから・・・起こさないで・・・』



「由里ーーーーーっっっ!!ほらっ!もう1本!!」




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