Tactic
「話って何よ?」


扉付近から教室の中央にいる俺に、トーコは立ちつくしたままそう言った。


俺を警戒してのことだろう。


「トーコ、んなとこにつっ立ってないでこっちまで来れば?」


「あんたにはいい噂がないでしょ?!だから距離を保ってるの!」

「いい噂じゃない噂って……どんなの?教えてよ」


くすくすと笑いながら、俺は余裕の表情でトーコを見据える。


「……あんたが、警察にもよくお世話になってるこの学校の卒業生の叶(かのう)さんのグループに入り浸ってるとか……あんたは女に手を出すのが早いだとか……」


「それだけ?」


黙ったままのトーコに、俺はゆっくりと近づく。


「智也は中一でしょ?中一のくせにそんな噂広まっちゃってどうすんのっ……」


顔を上げたトーコは、言葉を紡ぐことさえも途中で放棄した。


俺がトーコの体を教室内に引き寄せ、扉を閉めたからだ。


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