しなやかな腕の祈り
夢を見ていた。





幼いあたしは右側に女性
前に男性という配置の中に立っていて
女性と男性が言い争っている様を
ただじっと見つめている。
何を言い争っているのかも分からない。

何せ声が聞こえない、音が無いのだ。


あたしは右側を見上げた。





『おかあさん』







その女性は、お母さんだった。




今のあたしの年齢くらいのお母さんが
あたしの右手を握って
前にいる男性に何か一生懸命話している。
その目には涙が浮かんでいる。



そして、夢の中の幼いあたしは
気が付いてしまった。
右側にいるのがお母さんなら
この前にいる男性は、そう………










おとうさん












顔だけがハッキリ見えない。
ただ、お父さんもお母さんに
何か怒って言い返しているのが分かる。



『喧嘩したら、あかんよ』





あたしがそう言った瞬間
場面が変わる。
夢の中は何でもかんでも都合がいい。




見たことないような山の中に
古臭い家が一軒建っていて
その家に続く短い坂道を
あたしは一生懸命小さな足で登っていた。



『多嘉穂』



お母さんが洗濯物カゴを持って
笑顔であたしを呼んでいる。
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