しなやかな腕の祈り
3日目の朝、お母さんは笑っていた。『おはよう』って。今日はお母さんの劇団の練習を見に連れて行ってもらう日。あたしもファルダとサパトスをカバンに入れて行くようにお母さんに言われて、2人で用意して出掛けた。


稽古場は車で30分くらいの所にあった。…本当だったんだ、とあたしは息をのんだ。さすがスペインでトップの大劇団の稽古場。全面鏡張りの広い木製フロア。あたしは目眩がした。


お母さんはスペイン語を喋って、劇団の仲間にあたしの事を紹介した。ラテン系の人たち、あたしを代わる代わる抱きしめて歓迎してくれた。



「口元が千秋とよく似てる…やってさ」


お母さんも嬉しそうだった。



30分のアップの後、突然ブレリアスの曲が流れて練習が始まった。
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