しなやかな腕の祈り
着替えて出て来た時、はっきり言って『甘かった』。そう思った。隊列を組んで踊っていた人たちは全員フロアの片側に寄って、あたし1人が踊るには充分なスペースが空けられていた。




つまり、あたしがファンダンゴをソロで踊るって事。





「曲はないから、手拍子だけで踊りな。見てるから、頑張って」



お母さんは笑いながら言った。


深呼吸した。大丈夫…このプロの集団の前であたしが踊ったって、太刀打ちできるわけない。増して、道場破りをしにきたわけでもないんだから…いつものように伸び伸びファンダンゴを舞えばいい。


先月舞台に立った時に踊ったファンダンゴの基本姿勢を取って


「お母さん、もういいよ」


そう合図した。



一回、二回、三回。手拍子は重なっていく。四回、五回、五回半!!!で、あたしは強くサパティアートを打って踊り出した。

アレグリアスと並んで、ワルツの色が強く出ているファンダンゴが、あたしは大好きだった。心地良く時間が流れていくから。
< 40 / 137 >

この作品をシェア

pagetop