しなやかな腕の祈り
気持ちよくハンドルを切って、啓太が一人暮らししているマンションの前に横付けしてクラクションを鳴らしたら、啓太はすぐに出て来た。



「おう、ヤクザ車」


笑いながらそう言って、啓太は助手席に乗り込んできた。

今日のデートは、買い物して、彫り師の所へ行って終了。

しかも啓太の買い物。

彫り師の所へは、今日はあたしが用がある。

だいぶ悩んだけど、やっぱりあたしも入れ墨を入れる事にした。

洋彫りで、腰のところに薔薇を敷き詰めてその中で女性のバイラオーラが踊っている姿。

長年の夢だった。

姿も気持ちも体もフラメンコって民族舞踏で埋め尽くす事が。




男のくせに、啓太は買い物が長い。

服にかける執念は異常とも言える。

あたしはその間、フードコートでコーヒーを飲んで一人で待っている。

付き合っていたら、足が棒になってしまうから。

今日も案の定啓太は異常とも言える執念で服を選びまくっていて、あたしはコーヒーを飲んでいた。

休日でもないのにデパートの中は混んでいて、頭が痛くなりそうだ。

スペインは今頃夜中だろう。

お母さんは寝てるのだろうか。

色々考えながらコーヒーを啜っていた。
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