しなやかな腕の祈り
するといきなり啓太が大量の買い物袋を引っさげて、あたしの前に勢いよく座った。



「今日ャバィぜ」



何がャバィのか意味不明だ。

"あ、そう"とだけ答えて、あたしは席を立った。

啓太も満足そうな顔であたしの横をフラフラ歩いている。






…その時だ。






ドンっ…






あたしは勢いよく誰かにぶつかられて、転けた。



「…ってぇ-なぁ-!!!どこ見て歩いとんねん、クソが!!!」



ヒールが折れたのを見て、あたしは珍しくキレた。

妙にイライラする。

時差の関係で、頭がぼ-っとしているから???




だけどあたしの怒りはすぐに吹き飛んだ。

あたしにぶつかってきたのは、血まみれの本物のヤクザ。



「えぇぇぇぇ!!??大丈夫ですかぁ!?」



慌てた。

かなり真剣に。

あたしは刺してない!!

などと自分で色々考えているうちに、血まみれのヤクザは立ち上がって



「姉ちゃんこそ気を付けな」



と一言放って、一万円札をあたしに投げるように渡して走り去って行った。

見た感じ、お母さんと同い年くらいの人だった。

薄い唇をした、背の高い血まみれのヤクザ。

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